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2008-05-31 19:25 | カテゴリ:雑記
ジャンル:本・雑誌 テーマ:**本の紹介**
 うちの大学で行われた講演に行ってきました。
 「星野道夫と見た風景 ― 星野道夫 旅の軌跡」と題し、今は亡きアラスカ写真家・星野道夫さんの写真をスライドしながら星野直子夫人による写真解説。星野道夫ファンにとっては堪らない内容です。僕も一ヶ月前から行こうと決めてました(笑)
 事実、講演会場は30分前から人だかりができていて、講演開始時には500人用の講義教室がほぼいっぱいになっていました。参加者は60代位の年配の方が多かったものの、学生もかなりいました。
 星野道夫さんが亡くなったのはもう10年以上前なのに、彼の残した写真・エッセイにはそれだけの力があるんだなぁ、と改めて感心してしまいます。


 講演会が始まると司会の濁川教授に紹介され、星野直子さんが登場。直子夫人は一言二言挨拶を述べるとすぐにスライド写真用のパソコン前に座り、静かな声で解説を始めました。
 星野直子さんを見た時、最初に思い浮かんだのは「静謐」。人前で話されるのは得意ではなさそうでしたが、取り繕わずそれでいて品があって静かな印象。とても奥ゆかしい感じで、たおやかで、しかも若い方でした。一緒に行った友人は「綺麗な人だね」と驚いています(笑)
 星野道夫さんのことを全く知らないこの友人には10年以上前に亡くなった写真家、としか説明していなかったので、相当年配の婦人を想像していたのだと思います。(星野夫妻の年齢は17歳も違います)

【スライドショー】
 静かな、落ち着いた声で話される直子夫人によって、星野さんの写真は次々とスライドされていきます。写真を映すごとに、撮られた時のエピソードを事細かに話してくださいます。撮影中につい居眠りして、思いがけず出会った黒熊の親子。角をぶつけ合うヘラジカ同士の角が絡まり、そのまま二匹とも朽ち果てたこと。一人で見たオーロラの輝きと不気味さ。ずっと願い続けてきたカリブーの大移動を写真に収めたときの興奮。地面を縫うように咲くワスレナグサを発見した時の喜び。
 スライドショーの向こうにあるアラスカの広がりと時間の流れを感じます。
 切り取られた写真一枚一枚から、また直子夫人の話すエピソードの一つ一つから、星野道夫という人物の温かい人間性、謙虚で優しい性格を垣間見た気がします。

 会場の雰囲気もとても良かったです。静かな、小さな声で話される直子さんの声を聞き漏らすまいとするようなピンと張り詰めたような緊張感あり、エッセイには描かれていない星野さんのユーモアな逸話が出ると、笑い声が、静かにだけど一斉ににおこる。直子さんが言葉を切ったとき、詰まらせたときに会場の雰囲気がそれを包み込むように見守る。そんな充足感や安心感がありました。


【最後の朗読】
 スライドショーが終わった後、休憩を挟んで直子夫人による15分程の朗読がありました。朗読したのは「旅をする木」に収録されたエッセイ「ワスレナグサ」
 
 十一月のある晩、吹雪の北極圏で、初めて子供の誕生を知った。強風のためか、無線の声は遠かったが、スイッチを切った後、身体の奥底からふつふつと力が沸いてくるような気がした。シュラフにもぐりこんでも、なかなか寝つくことができず、様々な思いをめぐらせていた。ヘッドランプを消すと、夜の闇の中から、ゴォーッと唸るような風の音だけが聞こえていた――(「ワスレナグサ」冒頭)

 目を閉じて、じっと耳を傾けてみる。
 一度読んだことのある内容だったにも関わらず、感動して震えました。
 独りの原野。自分が繋げた「新しい命」という興奮の中で、様々な思いが星野さんを駆け巡っていく「ワスレナグサ」 直子夫人はどこまでも、静かで、いたずらに抑揚などはつけませんでした。それななのにか、それだからか、夫人の声の向こうにあるその時の感動が蘇ってきて、思わず泣きそうになってしまいました。(←自分に、大丈夫か!?と言いたくなるw)
 でも僕だけでなく、会場の人皆泣きそうでしたよ。本当に。

 池袋という都会のど真ん中にいるはずなのに、星野道夫さんの写真が、言葉が紡がれている時は、彼の意識の中にある、遠いアラスカの荒野の中にいるのだから不思議です。そして、それこそが星野道夫さんの持つ魅力なのだと思います。
 星野道夫さんの言葉を、直子さんに語ってもらえたこと。それを、この会場で大勢の方といっしょに聞き、それぞれが彼の言葉の中に自分の意識を放ち、小さな旅を同時にした。その、なんともいえない一体感と満足感は、普段味わえないような体験でした。純粋な美への姿勢。素直に驚く心。憧れ。講演の冒頭で、司会の教授が「時代が星野を求めているような気がしてならない」といったことに、少なからず共感を覚えます。それだけ、星野さんの世界から僕達の世界は遠くにあり、温かさや優しさを失っているのかもしれません。
 

 直子さんが語る星野さんは、やはり僕が思い描いていた大きくて柔らかい人でした。それが、とてもよく分かり、彼への尊敬と憧れが一段と強まりました。
 そして、星野道夫という一人の人物に心を動かされた人は僕だけじゃない。彼の言葉を、見た世界に想いを馳せている人が、こんなにもいるということ。この実感が、何よりも嬉しかったです。
 一緒に行った友人に感想を聞いたところ、「すごい良かった!今度エッセイを読んでみる」と言ってくれました。

星野直子さん、素敵な講演をありがとうございました!

~関連サイト~
星野道夫の世界
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