-------- --:-- | カテゴリ:スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2008-05-13 10:33 | カテゴリ:レビュー(小説)
ジャンル:小説・文学 テーマ:読書感想文
白い牙
作:ジャック・ロンドン
訳:白石佑光
(新潮文庫)

~概略~
北の荒野を犬橇が駆け抜けていく。二人の男、ビルとヘンリは飢えた狼の群れから逃げていた。ふと気がつくと6匹いた犬が5匹、さらに次の日には4匹と減っていく。火や銃、そして人間の知恵を知った賢い牝オオカミがその群れにはいた。巧みに二人を出し抜き、追い詰めていくオオカミ達。極限状態の中、犬と相棒を失い自らの生命をも失いそうになるヘンリは間一髪助け出されるが、彼は荒野に棲む牙の恐怖を痛いほどに知るのだった。
飢えを満たしたオオカミの群れは、やがて分裂し牝オオカミの争奪が起こる。季節を越え、勝ち残った片目の老オオカミと牝オオカミの間に新しい生命が生まれる。産み落とされた命の中にあって唯一生き残ったオオカミは、幾度かの荒野のの戦いを経験した後人間と出会い「ホワイト・ファング」と名付けられる。強い両親の下に生まれたホワイト・ファングは荒野と人間社会の両極を経験し、あらゆる不遇の中で孤独と凶暴性を獲得していく。やがて人間が敷した弱肉強食のリングの上で「けんかオオカミ」の異名をとり見世物にされるホワイト・ファング。ついに自分よりも大きな力に出会い、命を奪われそうになるが・・・。その時、ホワイト・ファングにある邂逅が訪れる――

 アメリカの作家ジャック・ロンドンの代表作であり、オオカミが持つ凶暴性や野性を鋭く細やかに描写した傑作だ。この「オオカミ視点」の秀逸さには脱帽。どこまでも本能的で、原理的な行動と動機。ホワイト・ファングの惨忍さ・したたかさが生の本質として、力強く伝わってくる。

 読み進めながら頭から離れなかったのは「何故これほど野生的な感性を映し出せるのか」という疑問だ。
 作者ジャック・ロンドンの生い立ちを調べてみると、彼はまさに「激動の人生」を体現するような人物だった。
 貧困街に生まれ、多くの仕事に手を出し失敗すると、牡蠣泥棒になる。(しかし翌年にはそれを取り締る役職につく)アザラシ船の乗組員として日本を訪れ、世界恐慌時代にはデモに参加、アラスカのゴールドラッシュにも加わったりと活動は多岐にわたるが、どれも不運に見舞われ志半ばで終えている。その後日露戦争の前線に赴きルポライターとして活躍した。
 作家としてはアザラシ漁船での体験を綴ったルポが賞を得た後徐々に頭角を現し、30代半ばにはアメリカでトップクラスの高給作家になった。結婚は2回。破局後の電撃結婚は強く非難された。「狼の館」という自前の建設物が放火によって消失した後、次第にエネルギッシュだった彼の行動に影がさし、40歳でモルヒネ自殺をした。

 ジャック・ロンドンの生涯は40年とあまりに短いが、その中身は驚くほどに濃い。彼は17歳まで厳しい貧困の中で暮らし、その後26歳位まで生活は好転しない。けれど短編集刊行後、彼は一躍脚光を浴び、高給作家に変身する。また、牡蠣泥棒に始まり最後は日露戦争のルポライターと、自らの命を顧みず、行動の幅はどんどん拡大していく。
 彼の生い立ちで印象的なことは、彼の生活が「極限状態の連続」であったことだ。富と貧困、成功と断念、何より生と死のギリギリの境界線に常に立ち続けている。彼の研ぎ澄まされた感性は、0と100しかないラインを交互に踏む進んだ、類稀な実体験に裏打ちされたものなのだろう。

 夕食が用意されるのは当たり前で、今日は学校をサボろうかどうしようかと真剣に考えている自分と、一寸先にはいつも闇があることを感じていたジャック・ロンドン。見えているものが違って、当然かもしれない。
 読後はホワイト・ファングの大団円に興奮しながらも、少し恥ずかしい気持ちになった。
スポンサーサイト
秘密

トラックバックURL
→http://mannenro.blog90.fc2.com/tb.php/70-15ae467c
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。