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2008-04-16 22:15 | カテゴリ:レビュー(エッセイ)
ジャンル:小説・文学 テーマ:読書感想文
生物と無生物のあいだ
講談社現代新書
作者:福岡伸一

 理系の書物としては珍しいロングベストセラー。ずっと読んでみたいと思っていた作品だ。
 
 「自己複製機能を持つもの」というのが現在の「生命の定義」だ。対して作者は、「持続的な代謝」こそが生命だと主張している。シューンハイマーの同位体実験から感得した「動的平衡」という概念より新しい生命観にアプローチする、というのが本書の枢要だ。
 内容は15に章分けされている。作者:福本氏が自ら籍を置き研究に明け暮れたロックフェラー医学研究所を中心に、分子生物学発展の過程にあった科学者達の成功と絶望を綴った前半部(1章~7章)と、前半の流れを踏まえ登場したシューンハイマーの実験から新しい生命観を提唱する後半部(8章~15章)に分けられる。

 本書の良い点は、生命科学における基礎的な概念や歴史、さらには実験手法までをも分かりやすくかつドラマティックに演出してくれるところだ。高校生物で習うワトソン・クリックの二重らせん構造の発見の裏にあったドラマは衝撃的であり、知的好奇心をくすぐってくれる。「アンサング・ヒーロー」として採り上げられるオズワルド・エイブリーやロザリンド・フランクリンの業績の大きさや、ワトソンとクリックが「禁じ手」を使っていた真実に息を呑まずにはいられない。理系本にありがちないたずらな難解さは少なく、幅広い語彙と多彩な言い回しは舌を巻くほどだ。分子生物学に触れたことのない人には、かなり面白い内容のはずだ。

 残念だったのは、テーマである新しい生命観への具体性・一貫性に欠けることだ。「動的平衡」による持続的な代謝=生命の説明が乏しく、反証などもない。これはあくまで新書であり学術論文ではないことは承知の上だが、動的平衡の概念の説明を繰り返す後半部に「新しい生命観」なる斬新さは全くなく、むしろ科学者達にまつわる裏話の方がずっと面白い。本筋より"オマケ"の方が充実しているといわざるを得ない。読後知ったのだが、動的平衡も決して新しい概念ではないらしい。

 では、この本は何故絶賛されたのだろう?
 それは、わずか300ページ弱の新書の中にあって明快でかつ面白い分子生物学の本、というのがなかったためだろう。ハヤカワ文庫の愛読者や専門の学生以外では、分子生物学の話題など滅多に触れることはない。この本が「売れた」原因は本書の内容的な新しさに依るものではなく、生化学が持つ魅力を分かりやすく伝えそれを″ビジネス″化した点にあるのだと思う。
 
 なぜ、こんなに批判的に書いてしまったのか、自分でもよく分からない。
 悪書などでは断じてない。読んだことのない人にはぜひ読んでほしいのだが・・・生化学を専攻する学生として、二番煎じでがっぽり儲けた本書に対して、卑しい嫉妬感と反感を覚えてしまったことは、やはり否定できない(苦笑)
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