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2008-04-05 00:06 | カテゴリ:レビュー(児童文学)
ジャンル:小説・文学 テーマ:読書感想文
幽霊の恋人たち―サマーズ・エンド
作者:アン・ローレンス
訳:金原瑞人
絵:佐竹美保

 物語の舞台は20世紀初頭のイギリス。夏の終わりのある夕暮れ、ベッキーが家路をぶらぶらと歩いていると一人の旅人がやってきた。不思議な空気を纏うその男はレノルズ名乗り、冬越しを兼ねてベッキー達の家で住み込みで働くことになる。

 リジー、ジェニー、そしてベッキーの3姉妹はことあるごと、レノルズに「家賃」と称してお話をせがむ。そしてレノルズは旅先で「見聞きしたこと」についてぽつぽつと語り始めるのだが、彼の話は不可思議で奇妙なものばかり。そして決まって幽霊の類や、「良き人々」――つまり妖精達が登場する。

 妖精騎士タム・リンやダーナ巨神族の物語など、レノルズが語るのはアイルランドやスコットランドに伝わる民話の数々なのだが、これらの話にはある共通点がある。
 それは、すべて恋愛物語だということと、女性中心の物語であることだ。

 作品の主人公・ベッキーは、貞淑や従順な女性ではなく活動的で自立した女性になりたいと願っている。レノルズが彼女や姉妹達に語るのは、単なるおとぎ話ではなく、知恵や勇気を出して愛や幸せを勝ち取る女性の成功譚だ。作中の時代が婦人参政権について論争が巻き起こっている最中であることや、ベッキーの最後の台詞からも、強いフェミニズムがうかがえる。

 しかしこの作品の白眉はもっと別のところにある(と思う)。僕が最も惹かれたのは、レノルズのストーリーテリングの絶妙さだ。作者も、レノルズの話は「語り口調」であることを意識し描いている。ありふれた前置きがなく、入り込みやすく、展開が読めない語り口。つい、「読んでいる」のでなく実際に話を「聞いている」ような感覚さえ覚えてしまう。聴衆がベッキー達であることから、既存の民話や神話を女性が好む形へと変えているのも、自らのストーリーテリングに聴衆を引き込ませる技である。話を退屈させないための方法を、レノルズの語りから見つけてみるのも面白いかもしれない。
 昔、ケルトにはバード(吟唱詩人)とよばれる人々がいた。各地を転々と旅し、村々での語りを生業とする人達だ。ケルト民話・神話にも詳しいロレンスは、レノルズを現代に生きるバードとして描いているのかもしれない。

 民話や神話を題材に、女性達の力強い自立を謳った作品。
 魅力的なストーリーテリングのお手本としても、ぜひ手にとってほしい一冊だ。
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