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2008-03-24 18:34 | カテゴリ:レビュー(小説)
からくりからくさ

作者は梨木香歩さん。

以前一度挫折した作品。どうしても諦められず、再度挑戦してみた。

古い日本家屋に住み込む4人の女性達の生活模様を描く。
この作品の前身には同著「りかさん」という作品がある。主人公・蓉子(ようこ)と彼女が祖母から譲り受けた市松人形「りかさん」との、奇矯な交流を描いた作品だ。なんとこの「りかさん」は蓉子と会話することができるのだが、本著「からくりからくさ」ではりかさんの魂はどこかを旅していて、その帰りを蓉子が待ち望んでいる、という冒頭から始まる。
りかさんの秘密を、唯一共有できた祖母が亡くなり、りかさんも喋らなくなった。
「りかさん」と地続きの物語でありながら、「からくりからくさ」は前身の要素をほとんど欠失させることで1作品としての独立性をも確固たるものにしている。

祖母の住んでいた日本家屋を、女子学生のアパートとして使うことになり、そこに機織を学ぶ紀久と民族模様を学ぶ与希子、外国人留学生マーガレットが、蓉子と共に住み込む。

作品のテーマは「繋がり」である。
血縁や文化の繋がり。理解や共感、怒りや怨念、願いや祈りの繋がり。4人の、対照的な性格やそれぞれの生き方が紡ぎだす重なりを通し、衝突と共有を繰り返しながら、物語は4人をある邂逅へと導いていく。
作品で描かれる全ては、いなくなったりかさんが蓉子たちの元に戻り、そしてまた旅立つまでの大きな流れに織り成された一つ一つの模様だ。色彩であり、その連なりでもある。4人の邂逅はりかさんにとっての新しい旅の一歩であり、蓉子達の世界でのそれは、一つの命の終わりと始まりとして描かれている。

要素の取捨選択により鮮鋭化された、点としての物語ではない。
これは、人が生きる流れそのものを表そうとした作品なのだ、と思う。


しかし物語を大局的に捉えようとすることは、「からくりからくさ」を語る上では無粋なことなのかもしれない。
結局、この作品の魅力は、それぞれの人物や歴史が絡まってできた模様一つ一つにあり、また、4人の女性が持つ力強さとしなやかさ、成長していく過程の中にこそ、見出せるからだ。
梨木香歩さんはエッセイ「ぐるりのこと」や「春になったら苺を摘みに」にて、他者の持つ人生と自分が重なり合う瞬間をいとおしむように綴っている。

共感してもらいたい
つながっていたい
分かり合いたい
うちとけたい
納得したい

私たちは
本当は
みな
        
               (新潮社「春になったら苺を摘みに」より)

紀久、与希子、マーガレット、蓉子の中に流れる温かい営みは
作者自身が持つそれであり、以前よりも繋がりが希薄になったと嘆かれる、現代人へのメッセージのようでもある。
僕が「からくりからくさ」を諦められなかったのは、この作者の人生にどこかで「つながっていたい」と、思ったからかもしれない。
DeleteFilesAtRebuild 1
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