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2008-03-17 23:58 | カテゴリ:レビュー(小説)
気取らず、笑って暮らしたいだけなのに――(本文より)

作品名:家なき鳥、星をこえるプラネテス

 作者は常盤陽さん。原作は幸村誠さん。モーニング連載の漫画「プラネテス」の番外編である。
 「プラネテス」は宇宙開発の盛んな21世紀後半、宇宙に浮かぶゴミ"デブリ"が社会的問題として認知されるようになった時代の物語だ。
 主人公はハチマキでもタナベでもない。なんと、ハキムだ。

 ハキムが何故、木星往還船フォン・ブラウン号に爆破テロを仕掛けたのか。
物語はハキムの成長を描き、彼が宇宙飛行士を夢見る少年から、世界を憎むテロリストへと変貌していく過程を鮮やかに映し出す。

 ハキムの純粋な宇宙への夢が、軍隊に入り生活していく中で少しずつぶれていく。周囲の欲望や傲慢さの中で、自分自身を見失い、やがてすべてに絶望していくハキム。緻密な世界観と豊富な軍事専門知識の中に織り込まれた、ハキムの心理変化こそ、この作品の白眉である。
 また、ハキムだけでなく彼を取り巻く多くの登場人物にその都度スポットライトを当てて、心情を照らす。
 その描写は、登場人物一人一人に対して誠実に向き合っているような・・・そんな、作者の人間性が出ている気がした。

 作品としての完成度は、さほど高いとはいえない。テロに至るまでの展開や動機にやや疑問が残り、中盤までの盛り上がりを、重要なテロのシーン、その後のエピローグまで繋ぎきれなかったからだ。
 しかし、素晴らしい作品であることに変わりはない。砂漠に住めない鳥アジサシに自分を重ねて涙するハキムの姿には、一読の価値が十二分にある。
 
 資本主義に塗れた、私利私欲がひしめき合う世界。物語の時間は約2080年頃だが、2008年とどれだけの差があるのだろう。
 幸せに生きるための答えや結論など、示されてはいない。けれど誠実に生きたいと願いながら道を踏み外した男の生き様が、作者のまっすぐな言葉で紡がれている。ぜひ、手にとって欲しい一作だ。
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