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2007-03-15 05:49 | カテゴリ:レビュー(児童文学)
ジャンル:本・雑誌 テーマ:児童書
 ケーテ・レヒアイス作  「ウルフ・サーガ」

 狼たちの目がちらとわたしをかすめるとき、わたしはその目の中に悲しみの色を見る。ひとが開放飼育場と呼ぶ、このちっぽけな領域に閉じこめられて、彼らは何を考えているのだろう?捕らわれの身を、運命とあきらめているようにも見える。しかし、それは人間の感じ方なのだろう。本当のことは、狼になってみなければわからない。
(序説より引用)

 
作者ケーテ・レヒアイスは1928年生まれのオーストリアの作家。大の狼好きである。彼女の描いた他の作品の中にも、しばしば狼が登場する様だ。他の著作はほとんど邦訳されていないため読んだことはないが、この作品「ウルフ・サーガ」はレヒアイスの描いた狼作品の中でも、最も広く読まれている一冊であるらしい。
 そのためか、狼の描写が克明で、動作、仕草のみでもどの狼の説明なのかが分かってしまう。主要キャラクターのほとんどはもちろん狼である。僕達が人間一人一人に違いを見出すように、レヒアイスは狼一匹一匹に明確な性格を与えている。動物に言葉を与えて擬人化する作品は「かもめのジョナサン」など多くの作品があるが、僕の知る限りでは「ウルフ・サーガ」は擬人化に最も成功した作品だ。それは言い回しによる性格の違いだけでなく、狼が持つ性質や習性を事細かに描写し、その動作の中で、キャラクターを明確に描き出したからだ。また、作品の主要部分でもある狼の群れの中で模擬的に行われる人間競争社会についてだが、狼の視点を借りてみることで、そこに存在する傲慢さ、不自由さ、危険性をより感じることができる。壮大なファンタジーでありながら、深いテーマを持った児童文学作品。ぜひ一読して欲しい。



 シリキの夢とワカの掟
 作品の核でありテーマでもある、シリキの夢に出てくる毛のない二本足の狼。この狼は、ワカの掟を忘れたショーガル・カンの群れ狼達を予言した姿であり、同時に人間を表している。自分達の種族のみを尊重し、他の種族を排斥していく狼達は、やがて自然のバランスを崩してしまう。自らも飢餓に苦しみ、狂気を助長させてさらに過ちを繰り返していく。
 この狼達の顛末はレヒアイスが10歳の時、ドイツ帝国に併合されナチス政権下で苦しんだ母国での経験が関係しているのだろう。幼少時代に体験したナチスの人種差別への恐怖と怒りが、シリキの夢に出てくる狼には強く表れているように思う。人間の持つ支配欲、傲慢さ、自然への敬意の欠失に対して、レヒアイスは作品を通して非難の声をあげているわけだが、同時に「ワカの掟」という多種族がお互いを助け合う神話を描くことで、他と共生していくことの重要性、共存の美徳を伝えている。それはレヒアイスの理念であり、願いであるのだろう。







ウルフ・サーガ〈上〉 ウルフ・サーガ〈上〉
ケーテ レヒアイス、カレン ホレンダー 他 (2004/11)
福音館書店

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~物語~
 おだやかな風吹く「ささやき風の谷」で、平和な日常を送っていたシリキ達、パロ・カン率いる群れの狼。彼らは「ワカの掟」とよばれる、生物の平等を詠った神 話を信じ、他の生物と自然を分け合いながら暮らしていた。しかし、近隣の群れからの不穏な遠吠えとシリキの夢の中に現れた恐ろしい予言もつかのま、北の国 ノルノルから川の砂粒ほどの狼の大群を率いて、巨大な黒狼ショーガル・カンが現れる。ショーガル・カンの目的は、すべての狼達を一つにまとめ世界を狼だけ のものにすることだった。群れのリーダーパロ・カンを殺され、ショーガル・カンの巨大な群れの中で生活することになるシリキ達。大きな群れの中で競争社会を体験する。仲間達が、個人の自由とワカの掟の許されないその生活に次第に順応していってしまう中で、シリキはそれが間違えであり、恐ろしい結果を招く ことを予感する。仲間を説得し、ショーガル・カンの群れから逃げ出すシリキだが、その結果、平穏と安心のない逃亡生活を強いられることになる。逃亡生活の中で、追っ手からの危機や自然の猛威など数々の苦難に合い、仲間と共に乗り越えていく。そして、新たな仲間と出会い、別れを経て成長したシリキ達は、ワカの掟を取り戻すため、再びショーガル・カンに立ち向かっていく。

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~つれづれ~
ウルフ・サーガは僕が中学一年生の時に読んだ本(7年前です)
当時、本はあまり読まなかった僕ですが、この作品にはのめりこんでしまいました。それは僕が大の動物好きであり、ウルフ・サーガには狼を筆頭に多くの動物が魅力的に描かれていたからでしょう☆読み終わった後、家族や友人、好きな女の子にまで薦めまくっていました(笑)
何より惹かれたのが主人公の雄狼シリキ!身体もそこまで大きくないし、気も強い訳ではない普通の狼なんですが、彼は巨大な黒狼に立ち向かっていきます。自分より大きな周囲の狼達が、目を合わせることさえ恐れているショーガル・カンに、「あなたは間違っている」と堂々というシリキは、ホントにカッコいい。
そしてシリキを支える仲間達もまた魅力的です。ということで主要狼&一押しキャラを紹介します(笑)

シリキ・・・主人公。若い雄狼で、身体は小さい。おとなしい性格だが、絶対的な力を持つ
ショーガル・カンに対し物怖じしない勇気の持ち主。
イミアク・・・パロ・カン亡き後群れを率いたリーダー狼。シリキの兄弟で年も近い。活力に溢れる仲間思いのいいヤツ。
星ネエ・・・シリキ、イミアクの姉であり群れの母親的存在。思慮深く、慈愛に満ちている。シリキのよき理解者である。
ヴグ、ヴォグ・・・パロ・カンがリーダーの頃から群れを守ってきた壮年狼。影からイミアクを支える頼れる兄貴達です。子守をしている時が一番幸せそう。
イッツィ、トオ・・・シリキ達の後、しばらくしてから生まれた子供狼。やんちゃでむじゃき
アジニ・・・シリキ達が逃亡の末行き着いた砂の国・ホガラに住む雌狼。小柄で好奇心旺盛。全狼中、一番可愛く描かれています(笑) イミアクのお嫁さんになります。
パロ・カン・・・ささやき風の谷の元リーダー。威厳があり、気高い。ワカの掟を重んじるよきリーダーだったが、ショーガル・カンに殺されてしまう。
アークナ・・・パロ・カンと共に群れを率いた雌狼。パロ・カン亡き後、瀕死の身体を引きずって、長老ホタの洞穴へと赴き、ワカの掟復活のために尽力する。母の力は偉大です。
ショーガル・カン・・・北の国での飢餓の経験から、狼が飢えない世界を作り出そうとする。暴力だけではなく、カリスマ性を備えた巨大な狼。ワカの掟を消し去ろうとする。
マハナ・・・元ささやき風の谷群れの一員だったが、自身の利益のためにショーガル・カンに味方する雌狼。女の恨みは怖い!?
ティカ・カン・・・ささやき風の谷近隣の群れのリーダー。まだ若く青い。そのためトカラの忠告を無視し、ショーガル・カンに服従する。さらにあろうことに良き妻であったトカラを捨てて、若いマハナの元に走るダメなヤツ。
トカラ・・・義理深く、筋の通った雌狼。ティカ・カンより幾分年上らしい。シリキ達の逃亡中、怪我を負った姿で再会する。途中までは一緒に逃げるものの、自分が一緒では逃げ切れなまいと、自ら命を絶つ。
オイヨ・・・忠実なショーガル・カンの僕。怖いくらいに忠実。怖い。
タッシュ・カン・・・隣谷のリーダー。パロ・カンと同年代の雄狼で、賢い。ショーガル・カンの群れに入るものの、ワカの掟は忘れていない。シリキ達の逃亡を助けた。

シャーク・・・アオカケス。アークナの無二の親友であり、シリキ達の旅の同行者。ムードメーカーでありトラブルメーカー。羽より先に口が出る。とにかくおしゃべり。
ホタ・・・山に住む長老熊。シリキと同じく、預言者として才覚を持つ、賢者。アークナを助ける。
キップキップ・・・シリキの親友となるリス。記憶力が皆無。明るくて、単純な性格がシリキを癒すが、出会いも束の間シリキは旅立ち、再会した時にはシリキのことを忘れていた。別れのシーンは感動的。
シュータ・・・雌ピューマ。口が悪く、屈折した性格だが、義理深い。子を助けてもらった代わりにシリキ達に危険を知らせてくれる。

ああ、書いてしまいました。こんな不毛な・・・まぁいいや。
「へぇ、面白そうじゃん」って思った方はぜひ読んでみてください^^
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